令和7年度和歌山県医師会事業計画
近年、国際情勢は多極化が進行しつつあり、我が国はそれぞれの国へのバランスのとれた対応が求められている。また国家間の経済・安全保障上の問題がさらに表面化し紛争にまで発展しつつあり、話し合いでの解決が望まれている。一方、国内では、人口減少・高齢化率の上昇で労働人口の減少が大きな課題であり、医療においては看護師等医療従事者が少なくなり、大きな問題である。労働人口の減少は和歌山県ではその傾向が顕著であり一層の対応が望まれる。
令和6年度には、いわゆるトリプル改定が行われ、医療においては一般的改定率0.46%に看護師等医療従事者処遇改善等に+0.61%、入院時食事対応で+0.06%、また医療費適正化のため生活習慣病関係の管理料・処方箋料等で▲0.25%となり、全体で+0.88%の改定となった。しかし和歌山県での看護師等医療従事者処遇改善等については、病院では90%において算定されているが、診療所では算定しているのは20%に至らない。つまり和歌山県の80%の診療所での改定率は+0.27%であり、光熱費等の上昇を考えるとプラス改定とは言い難い。来年、令和8年度は、次の診療報酬改定があり、全国での状況をみながら、このような改定方法で良いのか議論する必要がある。
昨今はAIなどの技術が身近なものとなり、医療DXもかかりつけ医として進めるとともに、人口減少・高齢化の進む中、和歌山県の健全な医療体制を整えて、県民の生命と健康を守っていくため、和歌山県医師会は以下のような事業を行う。
1.医の倫理
医師は、医療人のリーダーとして高度な知識と技術を習得するだけではなく、それを患者の生き方やACPなどにどのように役立てるかということを意識して医療を実践して行くことが常に求められている。県医師会は会員に対して、日医生涯教育講座等を通じて医の倫理について学ぶ機会をより多く提供して行く。
2.学術
医師は医療に従事する限り、生涯にわたり専門職としての医学知識・技術を習得する義務があり、診療にあたっては科学的根拠に基づいた医療を行う責任がある。学習は学会や医師会、医学分科会の講演会や研修会への積極的な参加など、さまざまな機会を利用して行われなければならない。また医学の発展に貢献するため研究に努める。
それらを成就するために、かかりつけ医が、プロフェッショナルオートノミーを理念とし、幅広い分野を網羅した日医生涯教育制度を活用して、より質の高い医療の提供を目指す。今後も、新専門医制度と、かかりつけ医による医療提供体制の調和と協力を推進する。
3.医療・介護・地域医療
県民が安心して良質な医療・介護を受けられるように民意を反映した第8次保健医療計画と第9期介護保険事業支援計画に沿った各種事業を企画推進する。特に令和5年度策定された認知症基本法を踏まえた認知症啓発・予防事業を行う。今後、新興感染症対策を含む第8次保健医療計画の施行にあたり平時と緊急時の医療体制の在り方を考え、更に新たな地域医療構想においても緊急時医療に対応できる体制を考慮し、医療・介護体制の総合的な企画に努める。
4.地域における医療・保健・福祉・介護
新型コロナウイルス感染症は収束しつつあるが今後の推移に留意し、また新たな新興感染症にも対応し得る診療医療体制を県行政と強い連携を保ちつつ県民の安心のための対策を講ずる。そのうえで、人口減少・高齢化が進む中でも県民が安心して健やかに暮らせる公平な地域共生社会を目指す。医療・介護の提供体制の情報収集や更なる充実を図りながら、医師の偏在の解消、医療関係者の労働環境整備に努める。また、母子保健、学校保健、産業保健、高齢者保健の一貫した推進と健康教育の拡充に努める。また、県民の健康を守るため、特定健診・特定保健指導の推進、がん検診の受診率及び精度管理の向上、小児を含む在宅医療や認知症対策、終末期医療等での多職種間の密接な連携推進を図る。
5.情報システム・広報・調査活動
個人の様々な医療情報を利活用し、現在そして将来の医療の発展に資するための「次世代医療基盤法」が制定され、その整備に必要な医療分野でのICTが推進されている。これらに関連して、令和元年6月には『経済財政運営と改革の基本方針2019~「令和」新時代:「Society 5.0」への挑戦~ 』が閣議決定され、生涯にわたる健診・検診情報の分析・活用を進め、マイナポータルを活用するPHR(Personal Health Record)との関係も含めた対応が整理されつつある。オンライン資格確認が原則義務化された。県医師会としても、必要に応じてICTへの理解を支援し、これらに関連付けた医師資格証(HPKIカード)の普及等にも傾注しながら、医療におけるICTの推進と情報の共有をはじめとした連携、さらには県民の健康意識の向上及び医の倫理を基盤とする利便性・有益性に配慮した医療情報システムの体制作りを促進させる。また、県医師会ホームページの充実とともに紙媒体を生かした重要な広報伝達の位置付けにある県医報誌のより質の高い紙面づくりを図る。
6.医療の安全確保
これからも安全な医療を提供することが、国民に対し不可欠な事である。
県医師会は、医療事故調査制度を活用し「医療に起因する」「予期せぬ死亡」の判断、事故調査の進め方についての理解を深めるために、県下の医療従事者を対象に、今年度も講演会をはじめとして啓発活動を実施していく。
7.救急災害医療
県民が安心できる県下全域における救急医療体制の整備を図る中で、県医師会は郡市医師会が中心となって市町村と共に提供している初期救急診療の維持と更なる充実に努める。
近い将来に発生する確率が高まった南海トラフ地震等の広域災害に対して、改訂された県医師会災害時医療救護活動マニュアルに基づいた危機管理体制の構築を目指す。平時より、連携している近畿6府県医師会、県内郡市医師会との相互支援に加えて、行政組織や災害関連他団体との協議を深めることにより、災害発生初期から復興期に渡る各期間において県医師会の果たす役割を確立する。国内他地域で大規模災害が発生し日本医師会においてJMAT活動が展開される状況があれば、和歌山JMATの派遣や活動を円滑に遂行するための計画、準備を行う。
8.産業医・産業保健機構の強化
多くの事業所では、物作りを始めとした産業を国民と一致協力して実施している。産業医には労働者の作業管理・作業環境管理・健康管理だけでなく、最近では過重労働・メンタルヘルスなど心身の問題をサポートすると共に、病気と仕事の両立支援さらには働き方改革など、今後多くの課題が提起されている。又、高齢者の従事に関しても今後大切な問題となってくる。「エイジフレンドリーな事業所」も目指していかなければならない。産業医は研修を重ねて事業所でのリーダーシップを発揮していきたい。
9.勤務医師
地域医療の充実のために、相互協力をさらに密にし、学術・介護・福祉・保健での連携を図る。さらに、医師の働き方改革を念頭に、勤務医の労働環境改善に協力し、研修医等への働きかけや医師会活動の理解と参加機会を多くすることにより加入促進を図り、医師会の組織強化を目指す。
10.女性医師、男女共同参画
女性医師が継続して勤務・就業できる為の環境を整備し、モチベーションを維持しキャリアアップや指導的役割を担う機会の確保・増加を図る。医学生や若手医師の時期よりワークライフバランスやプロフェッショナリズムへの自覚を促す。
指導的立場の方々を含め、男女共同参画社会への意識改革等への働きかけを図る。また、日本医師会女性医師支援センター・女性医師バンクとの連携を強化する。
11. 会員福祉
県医師国保組合、県医師信用組合、県医師協同組合との連携を密にし、会員相互の互助・団結を図る。
12.医政活動
日本医師会の医療政策を反映させるため郡市医師会に働きかけ、医政活動を活性化させ、日本医師連盟の活動を支援する。
13.その他
困難な状況に置かれている人への支援・対応(DV/子供虐待/LGBTQ)
看護対策
医業税制対策
医師会組織強化
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